一昔前の話
一昔前の話です。
離婚した1度目の結婚のこと。
私36歳、元夫51歳、知人の紹介で結婚しました。
元夫は外車ディーラーの店長をしていました。
第一印象は物腰やわらかな紳士でしたが、これはあくまで営業の顏でした。
知人から伝えられた結婚の条件は、元夫の両親と同居すること、元夫の給料や経済的な面はすべて姑が管理すること(そのかわり金銭的な不安は一切ないからと言われてました)
それに加え、近所には元夫の妹(45歳)夫婦が住んでいました。
元夫は物静かで無口なだけだと思っていましたが、実は他人にはまったく興味のない人間でした。
姑は息子を溺愛し、想像絶するくらいの過干渉。
「嫁に息子を取られた」勢いで、毎日聞くに堪えない嫌味の連発。
元夫の妹は毎日実家に上がり込んでは、勝手に冷蔵庫のビールを飲み、泣き叫び暴れる始末。
元夫にこの状況を何とかできないか相談しても、まったくとりあってくれませんでした。
一番大事なのは自分の仕事のことだけ。
私が元夫の隣で高熱を出し寝ていても、パソコン画面だけを見つめ仕事です。
「咳が出るからやめて」とお願いしても、タバコを吸い続け灰皿は吸い殻の山ができました。
そして、いつもテレビばかり見ていました。
部屋に入ればすぐにテレビです。
隣に私がいても、一切会話がありません。
寝る時もテレビはつけっぱなし。
元夫が眠ったのを見計らって、テレビを消していました。
一度「好きな番組を見ていいよ」と言うので見ていると、5分もたたないうちに「もう、いい加減にしてくれ!!」と突然キレられました。
何の前触れもなく突然キレられることが、私には意味がわからずショックでなりませんでした。
私はいつも孤独でした。
夫と一緒にいるのに、どうしてこんなに寂しく孤独なんだろう・・と泣けてきました。
テレビを見ているか、寝ているかの夫。
仕事がハードなので、こんな状態なんだろうと自分を慰めました。
しかし、会話もない、一緒に出掛けることも、一緒に笑うこともない、元夫は何のために結婚したのか、その時はわかりませんでした。
結婚して間もないころ「あなたの子守りはできないから」そう元夫に言われたことが、ずっと引っ掛かってました。
後になってわかりましたが、この結婚は姑が知人に頼みこみ強引にすすめたもので、息子に嫁を取り、家政婦兼自分達の介護要員、あわよくば跡取りを産んでもらうのが目的だったようです。
だから元夫には「嫁のことは全部私にまかせろ」と姑は言っていたようで、夫はいつも蚊帳の外、実際は姑と結婚したようなものでした。
今になって考えると、こんな変な家の息子と結婚したことが不思議でならないのですが、その頃の私は、この年上の知人を信頼していたので「この人がすすめるならば」と結婚を決めてしまったのでした。
そのうち、心と体が悲鳴をあげ、朝ベッドから起きるのが苦痛になってきました。
夜眠れない、吐き気、姑の声を聞くだけで動悸が止まらない等、いろんな症状が出始めました。
その時はすべてが色を失い、家の中が灰色に見えてました。
その日の朝も、台所で姑からさんざん嫌味な言葉を投げかけられると、私の体は小刻みに震えだし止まらなくなっていました。
すると姑の言葉が次第に遠くなっていき、頭の中で別の声が聞こえてきました。
(ここにいてはいけない・・ ここにいてはいけない・・)
その声で、ハッとしました。
そうだ、こんなところにいる必要はないんだ・・
すぐに二階に行き、自分の荷物をまとめ始めました。
姑は何かわめいていましたが、実家に戻ることを伝え家を出ました・・
そこから半年以上、元夫と話し合いを続けましたが、いくら言葉を重ねても現状は変わらず、離婚することを決めたのでした。
離婚したときは、死にたいくらいボロボロでした。
すべてを失ったような気持ちでした。
体調が悪く寝たきりのような状態で、自分が回復できるのか不安な毎日を送っていました。
はじめは嫁姑の問題で離婚したと思っていましたが、時がたつと結局は元夫に問題があったのだと思うようになりました。
(もちろん、この結婚を決めた私にも責任はあます)
元夫は、完全に自分一人の世界に生きていました。
自分の両親のことも「朝晩あいさつをするだけの人」と言っていました。
元夫にとって私は「そもそも存在しない人」だったのかもしれません。